腎機能計算式について
腎機能評価の重要性
腎機能の正確な評価は、以下の点で重要です：
- 薬物投与量の適切な調整
- 慢性腎臓病（CKD）の診断と病期分類
- 腎疾患の進行モニタリング
- 治療効果の評価
計算式の詳細
CCr（Cockcroft-Gault式）
計算式
男性: CCr = [(140 - 年齢) × 体重] / (72 × 血清Cr)
女性: CCr = [(140 - 年齢) × 体重] × 0.85 / (72 × 血清Cr)
特徴
- 薬物投与量の調整に広く使用
- 体重を考慮した個別化された評価が可能
- 実測CCrとの相関が比較的良好
注意点
- 肥満患者では過大評価の可能性
- 高齢者では実際の腎機能を過大評価する傾向
- 体重変動が大きい患者では注意が必要
eGFR（日本人のGFR推算式）
計算式
eGFR = 194 × Cr-1.094 × 年齢-0.287
女性の場合は上記 × 0.739
特徴
- 日本人のデータに基づいて作成
- CKDの診断・病期分類に使用
- 体格による影響を受けにくい
注意点
- 筋肉量が著しく少ない/多い場合は注意
- 急性腎障害では使用不適切
- 透析患者では使用不可
シスタチンC（eGFRcys）
計算式
男性: eGFRcys = (104 × CysC-1.019 × 0.996年齢) - 8
女性: eGFRcys = (104 × CysC-1.019 × 0.996年齢 × 0.929) - 8
特徴
- 筋肉量の影響を受けない
- 早期の腎機能低下を検出可能
- 高齢者でも比較的正確
注意点
- 甲状腺機能異常で影響を受ける
- ステロイド投与で高値となる可能性
- 測定法による差異に注意
計算式の使い分け
| 目的 | 推奨される計算式 | 理由 |
|---|---|---|
| 薬物投与量の調整 | CCr（Cockcroft-Gault式） | 多くの医薬品添付文書で採用されている |
| CKDの診断・管理 | eGFR | 国際的な診��基準として採用 |
| 筋肉量の影響を除外したい場合 | シスタチンC（eGFRcys） | 筋肉量に依存しない評価が可能 |
参考文献
- 日本腎臓学会編：CKD診療ガイド2012，東京医学社，2012
- Matsuo S, et al. Revised equations for estimated GFR from serum creatinine in Japan. Am J Kidney Dis. 2009;53:982-992.
- Cockcroft DW, Gault MH. Prediction of creatinine clearance from serum creatinine. Nephron. 1976;16:31-41.
- 日本腎臓学会編：エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018，東京医学社，2018