推算糸球体濾過量(eGFR)計算
eGFR計算パラメータ
計算結果
eGFRとは
推算糸球体濾過量(eGFR: estimated Glomerular Filtration Rate)は、血清クレアチニン値から腎機能を推算する重要な指標です。日本人のデータに基づいた推算式を使用しており、CKD(慢性腎臓病)の診断や重症度分類に使用されます。eGFRは腎臓が1分間あたりにどれだけの血液を濾過できるかを示す数値で、腎機能の客観的評価に不可欠です。単位はmL/min/1.73m2で表されます。
日本人のGFR推算式
- 男性:eGFR = 194 × Cr-1.094 × 年齢-0.287
- 女性:eGFR = 194 × Cr-1.094 × 年齢-0.287 × 0.739
単位:mL/min/1.73m2、Cr:血清クレアチニン値(mg/dL)
eGFR計算の重要性
eGFR計算は以下の理由で重要です:
- 慢性腎臓病(CKD)の早期発見・診断
- 腎機能に基づく薬剤投与量の調整
- 腎機能の経時的変化の追跡
- 腎機能障害のリスク評価
eGFR基準値について
eGFR基準値(年齢・性別別)
eGFRは加齢とともに自然に低下します。一般的な基準値は以下の通りです:
年齢 | 男性 eGFR基準値 | 女性 eGFR基準値 |
---|---|---|
20-29歳 | 90-120 | 80-110 |
30-39歳 | 85-115 | 75-105 |
40-49歳 | 80-110 | 70-100 |
50-59歳 | 75-105 | 65-95 |
60-69歳 | 70-100 | 60-90 |
70歳以上 | 65-95 | 55-85 |
※上記の値はmL/min/1.73m2で表されており、一般的な参考値です。医療機関によって基準値が異なる場合があります。
eGFRとクレアチニンクリアランス(CCr)の違い
eGFRとクレアチニンクリアランス(CCr)は共に腎機能を評価する指標ですが、以下のような違いがあります:
比較項目 | eGFR | クレアチニンクリアランス(CCr) |
---|---|---|
測定方法 | 血清クレアチニン値から推算 | 24時間蓄尿検査が必要 |
計算要素 | 年齢、性別、血清クレアチニン値 | 体重、年齢、性別、血清クレアチニン値、尿中クレアチニン値 |
単位 | mL/min/1.73m2(体表面積補正あり) | mL/min(体表面積補正なし) |
利便性 | 血液検査だけで算出可能 | 尿検査が必要で手間がかかる |
主な用途 | CKD診断・ステージ分類、スクリーニング | 薬物投与量の調整、より正確な腎機能評価 |
eGFR低値の原因と腎機能改善の対策
eGFRが低い主な原因
eGFRの低下(腎機能の低下)には様々な原因があります:
- 慢性疾患:糖尿病、高血圧、慢性糸球体腎炎など
- 加齢:年齢とともに腎機能は自然に低下します
- 腎毒性のある薬剤:一部の抗生物質、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)など
- 先天性腎疾患:多発性嚢胞腎など
- 尿路閉塞:腎結石、前立腺肥大症など
- 急性腎障害からの回復不全
- 生活習慣:喫煙、過度の飲酒、不適切な食生活、運動不足など
eGFRを改善するための対策
腎機能(eGFR)の低下を防ぎ、可能な限り改善するための対策には以下があります:
- 血圧管理:高血圧は腎機能低下の主要因。130/80 mmHg未満の維持を目指します。
- 血糖コントロール:糖尿病患者は適切な血糖管理が重要です。
- 減塩:1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。
- タンパク質摂取の適正化:CKDの進行段階に応じた適切なタンパク質摂取が重要です。
- 適度な運動:無理のない範囲での定期的な運動が推奨されます。
- 禁煙:喫煙は腎機能低下を加速させます。
- 体重管理:適正体重の維持が重要です。
- 十分な水分摂取:脱水を防ぎ、腎臓の負担を軽減します。
- 定期的な検査:特にリスク要因がある人は定期的な腎機能チェックが重要です。
注意:eGFRが既に低下している場合、完全に正常値に戻すことは困難ですが、上記の対策により腎機能の悪化を遅らせることができます。早期発見・早期対応が重要です。
CKDステージ分類
ステージ | eGFR値 | 重症度 | 推奨される対応 |
---|---|---|---|
G1 | ≧90 | 正常または高値 | 腎臓の損傷がある場合は経過観察 |
G2 | 60-89 | 軽度低下 | 生活習慣の改善 |
G3a | 45-59 | 軽度~中等度低下 | 定期的な腎機能検査 |
G3b | 30-44 | 中等度~高度低下 | 腎臓専門医への相談を検討 |
G4 | 15-29 | 高度低下 | 腎臓専門医による管理 |
G5 | <15 | 末期腎不全 | 透析導入の準備 |
注意事項
- 本ツールは医療従事者向けの参考値です。実際の診断・治療には、医師の総合的な判断が必要です。
- 高齢者、極端な体格の方、筋肉量が著しく異なる方では、実際の腎機能と異なる可能性があります。
- 急性期の評価には適していません。
参考文献
- ・日本腎臓学会編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018
- ・Matsuo S, et al. Revised equations for estimated GFR from serum creatinine in Japan. Am J Kidney Dis. 2009
- ・日本腎臓学会. CKD診療ガイド2012. 東京医学社
- ・KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease
- ・厚生労働省. 慢性腎臓病(CKD)診療連携体制構築の手引き
eGFR計算に関するよくある質問
厳密には24時間蓄尿によるCcr測定がより正確と言われていますが、蓄尿の手間や誤差の問題があります。eGFRは血液検査だけで簡便に測定でき、多くの臨床場面で十分な精度があるため広く使用されています。ただし、極端な体格の方や筋肉量が著しく異なる方ではeGFRの精度が低下する可能性があります。
測定頻度は腎機能の状態やリスク要因によって異なります。CKDと診断されていない健康な人は年1回の健康診断で十分ですが、CKDと診断された方やリスク要因(糖尿病、高血圧など)がある方は、医師の指示に従い3〜6ヶ月ごとの測定が推奨されることがあります。CKDのステージが進行している場合はより頻繁な測定が必要になることがあります。
はい、eGFRは以下の要因で一時的に変動することがあります:
- 脱水状態
- 高タンパク食の摂取
- 激しい運動の後
- 一部の薬剤の服用
- 発熱や急性疾患
そのため、単回の測定値だけでなく、経時的な変化を見ることが重要です。